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アジア進出の背景
近年、アジア市場のダイナミックな成長は、多くの日本企業にとって極めて魅力的なビジネス機会を提供しています。ASEAN諸国を中心に、中間層の拡大、インフラの整備、デジタル技術の普及といった要因が重なり、新たな消費者市場として注目を集めています。特に、EC・物流・製造などの分野においては、日本の製品・サービスが現地で高く評価される場面も多く見られます。
一方で、地域特有のリスクに直面するケースも少なくありません。言語・文化の違い、法制度の未整備、政治情勢の不安定さなど、日本国内では想定しにくい不確実性が数多く存在します。こうしたリスクを正確に認識し、戦略的に対応することが、アジア進出の成功に向けた第一歩となります。
リスクマネジメントの強化は、今や単なる「危機回避手段」ではなく、アジアビジネスを中長期的に成長させるための中核的要素といえるでしょう。
リスクマネジメントの基本
アジア進出を成功させるうえで、まず押さえておきたいのが、リスクマネジメントの基本的な考え方とプロセスです。
リスクマネジメントは、以下の4つのステップで構成されます:
- リスクの特定:対象国において発生する可能性のあるリスク要因を洗い出す(例:政治的不安定、規制変更、通関遅延など)
- リスクの評価:それぞれのリスクの影響度と発生確率を分析し、優先順位を設定する
- リスク対応策の策定:回避・軽減・移転・受容などの対応戦略を検討し、アクションプランを定義する
- モニタリングとレビュー:施策の有効性を検証し、変化に応じて更新する
とくにアジア地域では、法制度や慣習が日々変化しており、静的な対応では限界があります。継続的なリスクの棚卸しと柔軟な対応体制を整備することが求められます。
国別リスクの特性
アジアとひと口に言っても、各国の政治体制、法制度、文化的背景、経済状況は千差万別です。リスクマネジメントを効果的に行うには、進出対象国ごとにリスクの特性を把握し、個別に対策を講じる必要があります。
a. 中国市場のリスク
中国は世界第二位の経済大国であり、日本企業にとって巨大な市場ですが、その一方で法規制の複雑さと政治的要素が絡むリスクが存在します。
特に注意すべき点は以下の通りです:
- 知的財産権の保護:登録や模倣品対策を怠ると、ブランド価値の毀損につながります。
- サイバーセキュリティ法・データ越境規制:外国企業に対するデータ管理の厳格化が進行しています。
- 政治的リスク:政府方針や外交関係による突然の政策変更の可能性もあり、常に最新の動向を把握しておく必要があります。
参考:https://www.jri.co.jp/page.jsp?id=5651
b. 東南アジア諸国のリスク
東南アジアは、ASEAN加盟国(シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシア等)を中心に、経済成長が著しい一方、各国で制度的未整備やインフラの脆弱性、汚職・不正といった課題も存在します。
- インドネシア:労働法規制の変動が激しく、労使トラブルのリスクあり
- タイ:政治の不安定さが続いており、クーデターなどで混乱する可能性も
- ベトナム:許認可プロセスが煩雑で、行政手続きに時間がかかるケースがある
こうした国別の違いに対しては、現地の法制度・文化・商習慣に通じた人材やパートナーとの連携が不可欠です。
参考:Deloitteリスクマネジメント調査(https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/risk/articles/asia-pacific/risk-and-crisis-managment-survey-asia.html)
不正対策とガバナンス

アジア進出においては、企業外部のリスクだけでなく、企業内部に潜む不正リスクへの対処も重要なテーマです。
特に東南アジアや一部新興国では、公共契約や許認可に関わる不透明な取引、現地スタッフによる横領・粉飾といった事例も少なくありません。こうした内部リスクを未然に防ぐためには、コーポレートガバナンスの強化が不可欠です。
不正対策として有効な施策
- 内部統制の整備:職務分掌の明確化、承認プロセスの可視化
- 定期的な内部監査:不正兆候の早期発見と是正措置の実施
- ホットライン制度の導入:従業員による不正通報の仕組み(匿名性の担保がカギ)
- 倫理教育の徹底:現地社員・管理職に対するガイドラインと研修の実施
さらに、デジタル技術を活用したガバナンス強化も進んでおり、内部統制システムやERPを用いた業務の可視化が進んでいます。
参考:https://www.jkn.co.jp/h2_book08.html
アジア進出のメリットについてもっと詳しく知りたい場合は、LIFE PEPPERの会社概要・事例集・対応可能な国&施策まとめの3点セット資料をダウンロードしてご覧ください。我々の豊富な事例を参考に、ご自身のビジネス戦略に役立てられます。
ケーススタディ

リスクマネジメントの理解を深めるために、実際の企業の事例を「課題 → 解決策 → 学び」の3ステップで紹介します。
ケース①:中国進出における知財侵害
- 課題:日本の化粧品メーカーA社は、中国進出後に自社ブランドと酷似した製品が流通していることを確認。商標登録が不十分で法的対抗手段が限られていた。
- 解決策:中国国内での商標登録を再申請し、現地法律事務所を通じて模倣業者への訴訟を実施。ECサイトへの削除要請も実施。
- 学び:進出前の現地での権利取得は必須。特に知的財産関連は「先手対応」が鍵となる。
ケース②:東南アジア工場での不正発覚
- 課題:タイの製造子会社で、経理部門による帳簿の改ざんが発覚。現地社長と結託し、過剰請求やキックバックが行われていた。
- 解決策:第三者監査法人を起用し全容解明。関係者の解任と法的措置を講じるとともに、本社主導でERPシステムを導入。
- 学び:海外子会社でもグループ全体での統制が不可欠。可視化・標準化がリスク低減に直結する。
最新のリスクマネジメントツール

グローバルな事業展開が進む中で、リスク管理の現場ではテクノロジーの導入が進んでいます。アジア進出を成功させるためにも、最新のITソリューションを活用したリスクの「見える化」「予測」「対応強化」が不可欠です。
活用が進む代表的なツール・技術
- AIによるリスク予測分析:政治情勢や経済動向をリアルタイムで解析し、将来的な不確実性を定量的に把握。
- 統合型リスクマネジメントプラットフォーム(ERM):複数拠点のリスクを一元管理でき、現地との情報共有をスムーズに。
- サプライチェーンリスク管理ツール:物流網の断絶リスク、代替ルートの自動算出などが可能。
- サイバーセキュリティ・クラウド監査:現地とリモートで安全に監視・監査を行うことで、不正や情報漏洩リスクを低減。
例えば、SAPやOracleといったERPの導入によって、会計・購買・在庫などのプロセスを可視化・自動化し、リスクの早期察知が実現できます。
アジア市場に進出する際の成功のポイントはさまざまですが、より具体的な戦略を立てるためには、過去の成功事例を学ぶことが不可欠です。我々の事例集を含む3点セット資料をご活用いただき、充実した戦略を練る一助としてください。
アジア進出した日本企業の事例

最後に、アジア進出を果たした日本企業の事例についてご紹介していきます。
株式会社ギフティ

1つ目の事例は、株式会社ギフティです。
「eギフトを軸として、人、企業、街の間に、さまざまな縁を育むサービスを提供する」ということをビジョンとした企業です。
主な事業内容としては、オンライン上で気軽にギフトを贈ることができるカジュアルギフトサービス「giftee」の運営を行っています。
「giftee」ではスターバックスやミスタードーナツなど、人気ブランドのギフトが600種類以上展開されています。
そんなギフティは2018年9月に、ASEANでの本格的な事業展開を目的として、マレーシアに完全子会社となる現地法人を設立しました。
eギフトサービスはスマートフォンなどの電子機器を用いて購入・利用できるものなので、海外進出を検討する際にまず、ターゲット地域のスマートフォン普及率や利用率の高さが必要となります。
また、eギフトサービスの競合他社が多く存在しないこと、日常的にeギフトを利用できるくらい経済的に豊かな国であることなどが進出先検討の条件となるでしょう。
スマートフォンの保有率が高く、一日あたりのSNS平均利用時間が他国と比べて長いマレーシアは、今後eギフト文化を浸透させていくのに非常にマッチした地域でした。
やはり同じアジア圏とは言えど、日本と東南アジア地域は類似点ばかりではありません。
例えば、日本ではキャッシュレス決済サービスが様々な企業によって展開され、支払い方法はキャッシュレスが主流になりつつあります。
しかし、東南アジア地域では銀行口座やクレジットカードの保有率が低く、依然として現金決済が主流です。
eギフトはオンラインでギフトを購入し相手に送るという特性上、通常は送り主のオンライン決済が必要です。
しかし、このようなターゲット地域の現状やニーズを踏まえ、サービスを一部改良しながら現地の人にとって1番使いやすいサービスを提供することが必要です。
また、言語が共通していても微妙なニュアンスが伝わらないこと、商談の際にコミュニケーションが上手くいかないことなど、これらは全て文化や慣習の違いによるものです。
このような気づきは、進出前から現地に入って早めのうちに肌で感じることができると良いでしょう。
ギフティは今後も、マレーシアのみならずASEANを中心によりeギフト事業を拡大展開していく計画をしています。
参考:株式会社ギフティ
https://giftee.co.jp
株式会社デジタル・ナレッジ

2つ目の事例は、株式会社デジタル・ナレッジです。
株式会社デジタル・ナレッジは学校・企業への2000県以上の導入を誇り、eラーニングのシステム構築、教材制作、運用までをトータルにサポートする会社です。
インターネットを通じて情報・知識の流通をより効率的かつ効果的にすること、そしてより良い知識社会の実現に貢献することを会社の使命としています。
そしてeラーニング製品は全て自社開発製品であり、時代のニーズに応えたものから誰もがベーシックに使えるものまで、26年間の実績があるからこそ多くの消費者に選ばれています。
では、具体的にどのような製品を海外にも提供しているのでしょうか。
近年は、キルギス、中国、タイをはじめとしたアジア地域で、日系企業の海外展開のための人材育成プロジェクトにデジタル・ナレッジのeラーニングシステムが活用されています。
つまり海外向けのサービスは、主に海外日系企業スタッフの人材育成に活用されています。
例えば国際標準規格に沿った多言語のシステムや、グローバル人材育成のためのデジタルコンテンツ制作の総合支援などを提供しています。
ユーザー企業の海外進出先に合わせて、eラーニングシステムそのものをローカライズすることで現地のニーズに応えています。
そのためには、社内での情報共有や従業員の理解、そして協力体制が必要不可欠となります。
事業がアジア進出する際は、より社内でのコミュニケーションを重視し、戦略や企業姿勢がブレないようにすることが大切です。
あくまでも国内で成功した事業を基礎に、文化や慣習などの日本との違いを差分として埋めていくことがポイントです。
デジタル・ナレッジは今後も、「海外人材育成支援事業」、「教育事業の海外展開支援事業」、そして「国際開発事業」の3つの軸を通じて、世界中のお客様の学びの架け橋となることを目標にしていきます。
参考:株式会社デジタル・ナレッジ
https://www.digital-knowledge.co.jp
アース製薬株式会社

3つ目の事例は、アース製薬株式会社です。
虫ケア用品や入浴剤、洗口液などで高い国内シェア率を誇る製薬会社です。
1892年の創業以来、時代によって大きく変化する人々のライフスタイルに柔軟に対応しながら、数多くのヒット商品を生み出しています。
例えば、『アースノーマット』や『ゴキジェットプロ』はアース製薬を代表するロングセラー商品で、虫ケア商品のトップメーカーと言えるでしょう。
そして実は、アース製薬の事業は国内にとどまらず、海外でもアジアを中心に広く展開されているのです。
初めは1980年に、アースケミカル(タイランド)株式会社(現アース(タイランド)株式会社)を設立し、そこから積極的なグローバル戦略を推進していきました。
現在は国によって異なる生活習慣や嗜好性からニーズを掘り起こしながら、対象国に合わせて世界55ヵ国に製品を輸出しています。
また、中国でも1990年天津に工場設立して以来、積極的に拠点を広げていき、アジア地域の市場拡大のきっかけとなりました。
現在はクオリティの高い製品をアジア地域のお客様に届けるだけでなく、社会貢献活動も行っています。
例えばタイでは、洪水など災害時の物資提供による支援や、教育施設への寄付活動など、地域密着をキーワードに現地のお客様から愛される企業づくりに努めています。
やはり国内事業のみでは難しい市場の拡大が、アジア地域では人口の多さ故に可能となります。
綿密な市場調査をしながら、国内事業だけでなく海外事業にも力を入れて、年々フィールドを広げています。
社名に掲げられた「Earth(=地球)」には人々の役に立つ商品を世界中に広めていきたいという想いが込められています。
今後も世界中の人々の暮らしに寄り添いながら、製品を通して安全で快適な生活に貢献していくでしょう。
参考:アース製薬株式会社
https://corp.earth.jp/jp/index.html
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おわりに
アジア進出は、日本企業にとって今後の成長戦略の要です。ですが、現地には政治、法律、文化、経済など多様なリスクが複雑に絡み合っています。その中で成功を収めるためには、単に進出するのではなく、“備えて進出する”ことが重要です。
リスクマネジメントはコストではなく投資。その先にあるのは、現地パートナーとの信頼関係、消費者からのブランド支持、そして継続的な利益成長です。
今後のアジア市場で競争優位を築くためにも、現地リスクの可視化・評価・対応策を中長期的な視点で設計することが求められます。最新ツールを活用し、社内ガバナンスを強化しながら、持続可能な成長を実現していきましょう。
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