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なぜ今、「外国人観光客の誘致」が地方にとって重要なのか?
訪日外国人観光客の急増により、観光業は日本経済の重要な柱となっていますが、その恩恵は東京や京都といった大都市に集中しているのが現状です。一方、豊かな自然や独自の文化を持つ地方は、その観光資源を十分に活かしきれていません。地方がインバウンド誘致に取り組むことは、地域全体の活性化につながる大きなチャンスといえるでしょう。
ここでは、地方が外国人観光客誘致に力を入れるべき理由と、その進め方について考えてみます。
訪日外国人観光客の急増と都市部集中の問題
近年、日本を訪れる外国人観光客は飛躍的に増加し、東京、京都、大阪などの大都市では観光業が大きく発展しています。これらの都市は知名度も高く、観光客が自然と集まる傾向にあります。
しかし、この偏った人の流れは様々な問題を引き起こしています。都市部では混雑や生活環境の悪化が見られる一方、地方では観光業の恩恵を受けられず、経済発展の機会を逃しています。
こうした地域間格差は、日本の観光産業全体にとっても健全とはいえません。
地方がインバウンド誘致に取り組むべき2つの理由
「そもそもインバウンド施策ってどう進めるの?」という方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。地方でも実践できる集客の基本と成功事例をまとめています。
1. 地域経済の活性化
外国人観光客が地方を訪れることで、宿泊施設や飲食店、観光施設などの利用が増え、地域の経済循環が活発になります。これは新たな雇用を生み出し、若者の地元定着にもつながります。第一次産業が中心の地域では、観光業が新たな収入源となり、地域の経済基盤を強化する役割を果たすことが期待できます。
2. 地域独自の魅力発信と文化保護
地方には大都市にはない独特の風景や伝統文化、食文化が息づいています。こうした魅力を外国人観光客に伝えることで、地域のアイデンティティが再認識され、誇りの回復にもつながります。観光客の関心が高まることで、失われつつある伝統技術や祭りなどの保存活動が活発化し、文化継承の原動力になることも期待できます。
「誘致の方法がわからない」という地方の悩み
多くの地方自治体は観光振興の重要性を理解しながらも、限られた予算や人員の中で効果的な誘致方法を見出せずにいます。地域の魅力を発信したいという思いはあっても、どこにどのようにアプローチすればよいのか、具体的な行動計画を立てられないことが課題です。交通アクセスの不便さや多言語対応の遅れなど、インフラ面での課題も少なくありません。
インバウンド誘致で成功するには、地域固有の資源を活かした戦略的なプロモーションと、外国人が快適に過ごせる環境整備が欠かせません。そのためには、自治体だけでなく地元企業や住民、観光関連団体との協力体制を築くことが重要です。一過性のイベントではなく、持続可能な観光地づくりを目指す視点も必要となります。
最新データで見るインバウンド市場のトレンド

2025年3月の訪日外客数は3,497,600人となり、前年同月比13.5%増、3月としては過去最高を記録しました。特に、春の桜シーズンの到来や、東南アジア・中東地域での宗教的な長期休暇が重なったことで、訪日需要が大きく伸びました。
米国やインドを含む6つの市場で単月過去最高を更新し、韓国・台湾・タイなど11市場でも3月としての最高記録を達成。これにより、1月から3月までの累計訪日外客数は1,000万人を突破し、過去最速ペースで推移しています。
なかでも、訪日客の増加率が顕著だったのは中国(+46.2%)、インドネシア(+61.8%)、マレーシア(+26.6%)など。政府が掲げる「観光立国推進基本計画」に基づく取り組みが成果を上げつつあり、今後も「消費額の拡大」「地方誘客促進」「持続可能な観光」の3本柱を中心に、より戦略的なインバウンド施策が求められています。
出典:日本政府観光局(JNTO)訪日外客統計
月次報告
2025年3月推計値(2025年4月16日発表)
外国人観光客の動向とニーズを国別に理解する
訪日外国人観光客のニーズや行動パターンは、出身国や地域によって大きく異なります。それぞれの文化的背景や旅行の好みを深く理解することは、地方が効果的な観光戦略を練る上で欠かせません。ここでは、主要な地域からの観光客が何を求めているのか、地方がどのような体験を提供すべきかについて見ていきます。
最新の訪日市場動向を把握したい方は、国別の消費傾向や訪日理由をまとめた下記調査記事も参考になります。
各国の観光目的の違い
1. アジア圏
中国、韓国、台湾、香港などアジア圏からの観光客は「安全性」「近さ」「手軽さ」を重視する傾向にあります。彼らの多くは、ショッピングや食事、エンターテイメントを楽しみたいと考えており、都市部での買い物や日本食の体験に強い関心を持っています。最近では、日本製品の品質の高さや「メイドインジャパン」のブランド価値を求める層も増えてきました。
2. 欧米圏
アメリカやヨーロッパからの観光客は、より「文化的体験」や「歴史的な場所」を重視します。京都や奈良といった歴史ある街並みや、日本の自然景観に魅力を感じる人が多いのが特徴です。彼らは観光地で「消費」するというより、日本の伝統文化や自然との調和を「体験」したいという思いを持っていることが多く、一か所にじっくり滞在する傾向も見られます。
3. 東南アジア圏
シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンなど東南アジアからの観光客は、コストパフォーマンスの良さや娯楽性を重視します。ショッピングモールや温泉、テーマパークなどのレジャー施設に人気があり、ラーメンや寿司といった日本食への関心も非常に高いです。SNSでの発信を意識した「映える」観光スポットも強く求められています。
地方観光地に求められる体験
地方への観光客誘致で成功するカギは、大都市では得られない「本物の体験」を提供することにあります。外国人観光客が価値を見出すのは、次のような要素です。
1. ローカル体験
田植えや収穫などの農業体験、地引網や釣りといった漁業体験、陶芸や和紙づくりなどの伝統工芸体験は、外国人にとって新鮮で魅力的な活動です。日本人の日常に触れ、地域の人々と交流できるこうした体験は、旅の思い出に深みを加えます。最近では「暮らすように旅する」というコンセプトも人気で、地域の日常に溶け込むような体験が求められています。
2. 文化
地方に残る由緒ある寺社仏閣や古民家は、欧米圏の観光客にとって大きな魅力です。地域に根付いた祭りや伝統行事、郷土料理なども貴重な文化体験として高く評価されています。こうした文化的要素は、インスタントな観光体験とは異なる「本物の日本」を求める旅行者の心をつかみます。
3. SNS映え
今どきの旅行者にとって、SNSで共有できる魅力的な写真や動画を撮ることは旅の大きな目的の一つです。美しい自然景観や特徴的な建築物、色とりどりの郷土料理など、視覚的に印象的なスポットは自然と情報拡散され、新たな観光客を呼び込むきっかけとなります。地方独自の「映える」スポットを発掘し発信することは、観光戦略の重要な一環といえるでしょう。
外国人観光客の満足度を高めるには、受け入れ環境やサービス内容の充実も重要です。最新のトレンドを知りたい方はこちらもどうぞ。
「成功事例に学ぶ!地方のインバウンド誘致実践例」

全国各地で訪日観光客を取り込む動きが広がる中、「どうすれば地方に外国人観光客を呼び込めるか」は多くの自治体や観光事業者が頭を悩ませる課題となっています。実は、派手な観光資源や大きな予算がなくても、柔軟な発想と的確な戦略でインバウンド集客に成功した地方の事例は少なくありません。ここでは、実際に成果を上げた具体的な取り組みを紹介します。皆さんの地域での取り組みのヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。
韓国人観光客に特化したブロガープロモーションで、レンタカー利用者数が3ヶ月で5倍に!
訪日韓国人の間でレンタカー需要が高まっていることに着目し、韓国人向けに特化したSNSプロモーションを展開したレンタカー予約サービス企業の事例です。当初はNAVER広告のみで集客を試みましたが、思うような効果が得られなかったところ、韓国の影響力のあるブロガーを活用したプロモーションへと方針を転換しました。旅行好きの女性やファミリー層をターゲットに「レンタカーで楽しむ日本旅行」というテーマで記事を次々と発信したことで、関連キーワード検索での上位表示を実現できたのです。わずか3ヶ月という短期間でレンタカー利用者数が5倍に跳ね上がり、インバウンド集客に大成功を収めました。
有名テーマパーク、韓国人来園者数が閑散期に前年比200%増!
競争の激しいテーマパーク業界において、韓国人観光客の誘致を目指して韓国人ブロガーを起用したプロモーションを実施した事例です。客足が落ち込む閑散期の3〜4月に照準を合わせ、韓国語で20本以上の記事を公開しました。実際の体験に基づくリアルな感想や臨場感あふれる写真を交えたコンテンツが韓国国内で大きな反響を呼び、結果として来園者数は前年比200%という驚異的な伸びを達成したのです。海外のファン層を効果的に取り込むことで、年間を通じた売上の平準化と新たな市場の開拓に成功しました。
多言語メニュー導入で接客負担を大幅に削減した飲食店の取り組み
インバウンド需要の拡大に伴い、飲食店では多言語対応の必要性が日増しに高まっています。この事例では、翻訳の質にこだわった多言語メニューを導入することで、スタッフの接客負担を大きく軽減することに成功しました。ただ単に機械翻訳に頼るのではなく、バイリンガルスタッフが日本語特有の表現を丁寧に補足・意訳することで、外国人客にも理解しやすい内容に仕上げたのがポイントです。その結果、注文の流れがスムーズになり、顧客満足度と客席回転率の両方が目に見えて向上しました。
「何もない田舎」が魅力に!SATOYAMA EXPERIENCEの成功要因とは?
岐阜県・飛騨古川の田園風景を舞台にした「SATOYAMA EXPERIENCE」は、欧米豪の観光客をターゲットに年間3,500人以上を集めるツアーを展開しています。特別な観光スポットが乏しい地域でありながら、地元の人にとっては「当たり前の日常風景」を価値ある体験として提供することで、日本の自然や文化に興味を持つ外国人旅行者の心をつかみました。サイクリングを通じて日本の原風景を肌で感じられるこのツアーは、トリップアドバイザーでも満足度99%という高評価を獲得しました。地方の持つ資源をグローバルな視点で活かした好例として注目されています。
宿泊客の約4割が外国人!京都・祇園畑中が選ばれる理由
伝統的な旅館の魅力を大切にしながらも、積極的にインバウンド誘致に取り組んだ京都・祇園の老舗旅館の事例です。施設全体で外国語対応を強化しつつも、日本文化の真髄を体験できる価値を前面に押し出したことで、外国人宿泊客の比率は約40%にまで上昇しました。単なる「宿泊施設」ではなく、「本物の日本らしさを感じられる特別な体験の場」として高く評価され、リピーターや口コミによる新規客も着実に増加しています。文化的価値を丁寧に伝える姿勢が、訪日外国人の心をつかんだ好事例といえるでしょう。
SNS活用や広告施策をより詳しく知りたい方には、訪日外国人向けの広告戦略やプロモーション事例を解説したこちらもおすすめです。
外国人観光客誘致前に整えておきたい5つの準備

地方で外国人観光客を誘致するには、事前の準備が何より大切です。しっかりとした土台を整えることで、その後の誘致活動がスムーズに進みます。以下の5つのポイントを押さえて、効果的な受け入れ体制を作っていきましょう。
① 観光資源の棚卸しとターゲット国の絞り込み
まずは自分たちの地域が持つ観光資源を改めて見直し、それがどの国や地域の観光客に響くかを分析します。美しい自然、歴史ある建造物、独自の食文化など、地域ならではの魅力を洗い出した上で、それに興味を示しそうな国々を絞り込んでいくことが成功への第一歩です。
② 多言語対応の強化
外国人観光客を迎える上で、言葉の壁をいかに低くするかは重要な課題です。観光施設や宿泊施設では、英語やターゲット国の言語を話せるスタッフを配置したり、案内パンフレットを多言語化したりする必要があります。最近では精度が向上したAI翻訳ツールも活用し、コミュニケーションをスムーズにする工夫も効果的です。
③ SNS運用とデジタルツールの活用
現代の旅行者はSNSやインターネットを通じて情報収集するのが当たり前になっています。InstagramやFacebook、最近ではTikTokなどで地域の魅力を定期的に発信することで、潜在的な訪問者の関心を引くことができます。観光案内アプリやオンラインチケット予約システムなどを導入すれば、より便利で快適な旅行体験を提供することができます。
④ 海外マーケティングの理解と実践
外国人観光客をターゲットにしたマーケティングは、国内向けとは異なるアプローチが必要です。各国の文化や価値観に合わせた広告やプロモーションを展開し、適切なSNSプラットフォームやWeb広告を活用することで、より効果的に情報を届けることができます。
⑤ 専門パートナーとの連携
観光誘致の成功には、インバウンドマーケティングの専門家や業界に精通した企業との連携が欠かせません。彼らの知見やネットワークを活用することで、より効率的に誘致活動を進められます。地域の観光協会や商工会との協力体制を築くこともとても重要です。
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【FAQ】外国人観光客誘致でよくある質問5選
英語が話せないけどどうすればいいですか?
予算がほとんどないけどどう始めるといいですか?
どの国から誘致すべきですか?
何を魅力として伝えればいいですか?
何から手をつければいいですか?
まとめ:地方の観光資源を海外目線で活かす
地方の観光資源は、見る角度や伝え方を工夫することで、海外からの観光客にとって魅力的になります。日本の地方には、都会では味わえない「静けさ」や「豊かな自然」、そして「伝統文化」があり、これらは外国人観光客にとって特別な体験となります。四季折々の風景や郷土料理、地元の人との交流などが観光客の心に残り、地域の独自の魅力を引き出すことができます。
観光誘致には、SNSやウェブ広告、デジタルツールを活用して、ターゲット層に効果的に情報を届けることが重要です。InstagramやTikTokを活用し、視覚的に魅力を伝えることで、若い世代を引き付けることができます。多言語対応を強化し、外国人観光客が情報を簡単に得られるように配慮することも大切です。
観光誘致を成功させるための第一歩は、正確な情報とアドバイスを得ることです。LIFE PEPPERの資料をダウンロードし、無料相談を活用して、海外目線で地域の魅力を引き出し、戦略を立てましょう。
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